津波で枯れた木材を使用した平舞台の提案
照明探偵団シンポジウム in 仙台(場所:せんだいメディアテーク)
2012年10月6日
宮城大学3回生(当時)長沢莉保さん
私は9月中旬に初めて被災地の南三陸と女川へ行き、震災から約1年半経った被災地の現状を見てきました。町内には横に倒れたままの建物がいくつかありましたが、それ以外はなにもなく、まっさらな土地が広がっていました。私はその景色を見たとき「ここの夜は灯り一つない、真っ暗な世界なのだろう」と思い、同時に3・11の夜を思い出しました。電気が付かないまま夕方になり、日が沈んで灯りがなくなるので、夜を迎えるのがとても不安でした。南三陸のまっさらな土地は、そんな震災当時の不安を思い出す景色でした。
被災地を訪れて実感したことは、1年半経った今でも震災の跡が色濃く残っていて、町のみんなが復興に向けて頑張っているということです。そんな被災地では今、津波で枯れた木材の使用方法が課題となっています。
私は、津波で枯れた木材を利用し、海上にせり出させる大規模な平舞台−−−ウッドデッキを作ることを提案します。
2012年10月6日
宮城大学3回生(当時)長沢莉保さん
私は9月中旬に初めて被災地の南三陸と女川へ行き、震災から約1年半経った被災地の現状を見てきました。町内には横に倒れたままの建物がいくつかありましたが、それ以外はなにもなく、まっさらな土地が広がっていました。私はその景色を見たとき「ここの夜は灯り一つない、真っ暗な世界なのだろう」と思い、同時に3・11の夜を思い出しました。電気が付かないまま夕方になり、日が沈んで灯りがなくなるので、夜を迎えるのがとても不安でした。南三陸のまっさらな土地は、そんな震災当時の不安を思い出す景色でした。
被災地を訪れて実感したことは、1年半経った今でも震災の跡が色濃く残っていて、町のみんなが復興に向けて頑張っているということです。そんな被災地では今、津波で枯れた木材の使用方法が課題となっています。
私は、津波で枯れた木材を利用し、海上にせり出させる大規模な平舞台−−−ウッドデッキを作ることを提案します。
厳島神社・平舞台の仕組みを利用したウッドデッキの建築
《提案動機・理由》
1. 枯れた木材の再利用
どこの被災地でも見かける津波をかぶって枯れてしまった塩害木。 建材としては敬遠される塩害木を使ってウッドデッキを建築。
<補足>
有名な塩害木の再利用の実例として、陸前高田「みんなの家」が有名です。空に向かってそびえ立つ19本の柱は、塩害を受けたスギの木です。
※丸太の皮むきには、宮城大学 中田千彦研究室が協力しています。
1. 枯れた木材の再利用
どこの被災地でも見かける津波をかぶって枯れてしまった塩害木。 建材としては敬遠される塩害木を使ってウッドデッキを建築。
<補足>
有名な塩害木の再利用の実例として、陸前高田「みんなの家」が有名です。空に向かってそびえ立つ19本の柱は、塩害を受けたスギの木です。
※丸太の皮むきには、宮城大学 中田千彦研究室が協力しています。
2. 台風などの自然災害に強い海洋構造物、厳島神社
宮島・厳島神社は海面上に建造され、潮が満ちると床近くまで水につかり海に浮かんでいるように見え、引けば高床式のような姿を現す特異な構造になっている。
厳島神社はおよそ800年前に造営されたが、本殿は度々起こる台風などの自然災害にも耐え、一度も被害を受けていない。
宮島・厳島神社は海面上に建造され、潮が満ちると床近くまで水につかり海に浮かんでいるように見え、引けば高床式のような姿を現す特異な構造になっている。
厳島神社はおよそ800年前に造営されたが、本殿は度々起こる台風などの自然災害にも耐え、一度も被害を受けていない。
【平舞台の秘密】
秘密のひとつが海上にせり出している平舞台。
平舞台は雅楽などに使われる舞台で、社殿は5つの平舞台で囲まれている。舞台と杭は固定されておらず、大波が来た時にはいかだのように海に浮かぶようになっている。
平舞台には目透し(まとおし)という7〜8ミリのすき間が開いていて、このすき間が波を逃がすことで大きな波はそのエネルギーを弱める。高潮時には床下から押し上げてくる海水の浮力を弱め、さらに床上の水を海へ返す役目を果たしている。
【廻廊の秘密】
108間(柱と柱の間)ある「廻廊(かいろう)」のすべての柱の間には、8枚の床板が敷設されていて、それぞれの板の間にも隙間が設けられている。
秘密のひとつが海上にせり出している平舞台。
平舞台は雅楽などに使われる舞台で、社殿は5つの平舞台で囲まれている。舞台と杭は固定されておらず、大波が来た時にはいかだのように海に浮かぶようになっている。
平舞台には目透し(まとおし)という7〜8ミリのすき間が開いていて、このすき間が波を逃がすことで大きな波はそのエネルギーを弱める。高潮時には床下から押し上げてくる海水の浮力を弱め、さらに床上の水を海へ返す役目を果たしている。
【廻廊の秘密】
108間(柱と柱の間)ある「廻廊(かいろう)」のすべての柱の間には、8枚の床板が敷設されていて、それぞれの板の間にも隙間が設けられている。
【社殿の秘密】
社殿の床と柱の構造にも工夫がある。床が大きな波でせり上がると、柱と擦れて波の勢いをさらに弱め、大きな波が本殿におよばないような仕組みになっている。社殿の土台は、平らな海底に置いた礎の上に柱を設け、建物自体の重さで建っている。
【大鳥居の秘密】
奈良の大仏と同じくらいの高さ16mを誇る巨大な「大鳥居」は、一見根元を海底に埋め込んでいるように見えるが、基礎は固定されていない。海底部分に松材の杭を打って地盤を強化したうえで、その上に布石を並べた基礎部で根元の楠を支え、上部にある箱型の島木(しまぎ)の内部にこぶし大の玉石約7トンを詰め加重することで自立している。
さらに、6本足の主柱・袖柱で安定させると共に、柱と屋根の交差する部分には特殊な造りのクサビをほどこし、柱と屋根の動きやひずみなどを自然に吸収させることで強い台風や波にも耐えられる構造となっている。
このように幾重にも施された工夫によって、厳島神社は、周囲の自然と調和した美しい姿を今に伝えている。
<補足>
台風に伴う土石流、高潮などの被害を度々受けていますが、毎回被害を受けるのは一部の建物に限られています。(能舞台、門客神社、楽房など)
社殿の床と柱の構造にも工夫がある。床が大きな波でせり上がると、柱と擦れて波の勢いをさらに弱め、大きな波が本殿におよばないような仕組みになっている。社殿の土台は、平らな海底に置いた礎の上に柱を設け、建物自体の重さで建っている。
【大鳥居の秘密】
奈良の大仏と同じくらいの高さ16mを誇る巨大な「大鳥居」は、一見根元を海底に埋め込んでいるように見えるが、基礎は固定されていない。海底部分に松材の杭を打って地盤を強化したうえで、その上に布石を並べた基礎部で根元の楠を支え、上部にある箱型の島木(しまぎ)の内部にこぶし大の玉石約7トンを詰め加重することで自立している。
さらに、6本足の主柱・袖柱で安定させると共に、柱と屋根の交差する部分には特殊な造りのクサビをほどこし、柱と屋根の動きやひずみなどを自然に吸収させることで強い台風や波にも耐えられる構造となっている。
このように幾重にも施された工夫によって、厳島神社は、周囲の自然と調和した美しい姿を今に伝えている。
<補足>
台風に伴う土石流、高潮などの被害を度々受けていますが、毎回被害を受けるのは一部の建物に限られています。(能舞台、門客神社、楽房など)
実践例と期待される平舞台の役割
《実践例》
建築場所は、被災地沿岸部の人が住めなくなってしまった地域に設定。
《期待される平舞台の役割》
1. イベント開催の場
その地域の人々がイベントや地域行事を開催するなど、長期的に人が集まれる場所に。
2. 広場
日中、家族や友達で賑わう公園のような広場に。
3. 街のシンボル
自然と一体化した夜景を演出するライトアップを施し、街のシンボルとして、アイデンティティを創り上げられる場所に。
落ち着いたトーンの照明が、その土地に住む方々にとって心地よい光となるのではないか。
建築場所は、被災地沿岸部の人が住めなくなってしまった地域に設定。
《期待される平舞台の役割》
1. イベント開催の場
その地域の人々がイベントや地域行事を開催するなど、長期的に人が集まれる場所に。
2. 広場
日中、家族や友達で賑わう公園のような広場に。
3. 街のシンボル
自然と一体化した夜景を演出するライトアップを施し、街のシンボルとして、アイデンティティを創り上げられる場所に。
落ち着いたトーンの照明が、その土地に住む方々にとって心地よい光となるのではないか。